授業力アップ 学級経営の話

現職の小学校教員30年の経験から学んできたことを紹介します。
授業力や学級経営について参考になれば幸いです。

国語 俳句・短歌の授業 1

国語 俳句・短歌の授業 1


教科書に載っている有名な俳句や短歌を鑑賞する前に、全国の小学生が詠んだ句や歌を鑑賞します。



その方が、子どもにとっては、身近で想像しやすいのです。


これまでに紹介してきた「魔法のテレビ」が効果を発揮します。


特に俳句は、五・七・五の十七音しかありません。


たった十七音の中にたくさんのことが詰まっています。


俳句の読みは、その十七音を広げていくことなのです。


いつのこと❓ 季節・時間

どんなところ❓ 場所・背景・天気

だれ❓ 主人公・登場人物

その様子や気持ち


どんなことを❓ 行動



魔法のテレビの想像力で、頭の中に映像を思い浮かべて、文章化していきます。


6年生で何度も取り組みましたが、情景を想像し、見事にその世界を鑑賞文に描いていました。


この鑑賞文は、俳句の世界を想像して、作文に置き変えて考えて書いていく方法です。



「世界のこども俳句館 ハイク•ブック」に掲載されている中からいくつかの俳句を選んでもらいました。


「星くずが降ってきそうな虫の声」


「落ち葉だけ運動場がせまくなる」


「かたぐるま父の背中は土のにおい」


「ほたるがり放したひとつ星になる」


「夏の山私もななめ木もななめ」


「母の歌せんたく物もすぐかわく」



「しかられてしんしんと光る星を見る」


「ぬぎすてたパジャマの形ほがらかに」


これらの俳句はみな子どもが詠んだものです。



その中で、


「夕焼けの ミットにびしっと 父の球」


この俳句を選んだ子は、こんな鑑賞文を書きました。




朝、父さんとぼくは家をいっしょに出た。学校の近くのバス停までいっしょに歩いた。父さんに

「父さん、家に帰ったらキャッチボールしようね」

と言った。父さんは笑顔でうなずいた。

そして、学校が終わって、ぼくは走って帰った。

「ただいま」

「おかえり」

と母さんが言った。

「父さんまだ?」

「まだよ」

ぼくは父さんとキャッチボールをするのは久しぶりだから、うきうきしてがまんできなかった。

そして、1時間ほどすると父さんが帰ってきた。

父さんは上着を脱ぎ、ミットを持った。

「父さん、思い切り投げて」

とぼくはミットをバシバシとたたいた。

父さんが投げた。ぼくは、こわかったけど、うまくキャッチできた。

でも、手がしびれるくらい痛かった。

前は取れなかったのに父さんのボールを取れた。

手を見ると、真っ赤になっていた。

真っ赤にそまった夕焼け空とぼくは手の色をくらべた。



🔷作文が苦手だった子もこれだけの想像をして書くことができました。


「いのる間も 背に来てとまる 赤とんぼ」



この俳句を選んだ子はこんな鑑賞文を書きました。




おじいちゃんのお墓参りに行った。おじいちゃんのお墓を洗ってから、お母さんが

「みんなで手を合わせよう」

と言った。

「おじいちゃん・・・」


すると、赤とんぼがおじいちゃんのお墓にとまった。

「あっ、見て見て。お母さんの背中にも赤とんぼ」

と伝えた。

祈ってる間、ずっとお母さんの背中にとまっていたとんぼ。

「とんぼが仲間を呼んできたんだよ。きっと」

「そうだろうね」


「おじいちゃん、また来るからね」

私はこの俳句を書いた生徒と同じように思ったことがあります。

秋、おじいちゃんのお墓参りに家族で行った時、赤とんぼがいっぱい飛んでいました。

おじいちゃんの体(お墓)をみんなで洗って、おじいちゃんとお話をしました。

その時も赤とんぼがいっぱい飛んでいました。その景色は今もはっきり覚えています。きれいになったお墓におじいちゃんが好きだった花をかざり、みんなで手を合わせました。

すると、どこからか一匹赤とんぼが飛んできて、お墓の上にとまりました。

おじいちゃんが来たような気持ちになり、じっと見つめていました。

とんぼは、羽根を広げたり、閉じたりして、私の話を聞いてくれているように思いました。


6年生でもわずか十七音からこれだけの想像ができるのです。



自分の中にある経験と重ねながら、言葉を広げていくのです。


魔法のテレビで想像力を鍛えていくと、こんな鑑賞文を書けるようになります。


こうして子どもが作った俳句を読み込んでから、教科書に載っている俳句や短歌の鑑賞をすると、より深く読めるようになります。

その2に続く




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