授業力アップ 学級経営の話

現職の小学校教員30年の経験から学んできたことを紹介します。
授業力や学級経営について参考になれば幸いです。

平和学習③追求するテーマ

🔴平和学習③追求するテーマ


◯6年生の社会科や総合的な学習では、平和について調べていく活動をよくしているかと思います。


◯グループやペア、個人でテーマを選び、調べ学習をしていく形で進めていきます。


◯ただ、子どもに丸投げしてしまうと、同じようなテーマになったり、何をテーマにすればいいのか分からなかったりします。


◯たくさんのテーマをヒントとして、提示しておくと、子どもたちもそこから発想を得て自分なりのテーマを見つけ出していくようになります。


1.広島・長崎への原爆投下

2.沖縄での地上戦

3.空襲

4.真珠湾攻撃

5.開戦と敗戦への道のり

6.戦時下の学校

7.戦争中の暮らし

8.日中戦争、アジアでの戦線拡大

9.世界大戦の中での出来事


◯もっとたくさんのテーマがあるかと思います。大きなテーマの中からさらに細かくテーマを設定していきます。


◯例えば、「戦時下の学校」のテーマを細分化すると、


①食べ物 配給制度

②教科書の内容

③先生の教え

④子どもたちの遊び

⑤将来の夢

⑥学童疎開

⑦子どもたちの被害

⑧戦後の子どもたち


◯こうしたテーマ以外で自分が興味ある事を調べてもいいのです。


◯兵器や武器に興味を持つ子どももいます。私も子ども時代によくプラモデルで軍艦や戦車を作って遊んでいました。


◯ただ、原爆の威力や零戦、戦艦大和の戦闘力を調べて発表して終わりとならないような指導が必要だと思います。



◯戦闘機などの兵器をカッコいいと思う気持ちは子どもにはあるのです。


◯否定するのではなく、その兵器による戦闘で、人間の命がどうなったのかを考えさせることが大切です。


◯また、爆撃機から大量の焼夷弾が撒かれる映像を見るだけでは、想像しにくいのです。その空の下に暮らしていた人々の被害の様子を写真や語りを併せて見る事でようやく理解できるようになります。


◯戦艦大和について調べている子には、壮絶な戦闘の末に、ほとんどの乗組員の命が海に消えた事も同時に考えさせることが必要です。


◯「戦争について調べる」ことの目的は、「平和の尊さ」について考えることなのです。



◯キーワードは、「命」と「幸せな暮らし」です。そこをしっかり押さえないと、「兵器調べ」のような学習になってしまうこともあるのです。


◯映画「ホタルの墓」や「象のいなくなった動物園」などを見たり、戦争体験者の話を聴き取りした子どもは、戦争の断片的な知識は持っているかと思います。


◯個々が調べたことをみんなで共有化し、戦争についての知識を体系化して捉えられるように進めていくことが必要です。


【つづく】

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性の多様性①

🔴性の多様性①


◯現在、「性」は「男」と「女」という単純に二分化するものではないことが、科学的にも社会的にも認知されてきています。


◯ある小学校に一人の「男の子」が入学してくることが分かりました。


◯Aくんは幼い頃からずっと長い髪をかわいいリボンで結び、服装もピンク色が好きで、スカートを好んで着ていました。


◯両親は悩みます。病院で診断を受けた結果、身体は男の子として生まれてきたけれど、心は女の子であるという「性同一性障害」ということが分かりました。


◯昔、「3年B組金八先生」で上戸彩さんが演じたことでご存知の方もおられるかと思います。


◯両親は悩んだ結果、Aくんにとって自分らしい生き方をしてほしいと願います。


◯幼稚園では、Aくんは自分らしさを認めてもらい、「女の子」として過ごしていました。


◯さて、幼稚園から経緯を聞いた小学校では、Aくんを迎えるにあたって会議を重ねます。


◯初めてのケースで戸惑っていた教職員たちでした。それまでは、男女別名簿で男子から先に行うという形が当たり前の学校だったからです。


◯まず、教職員が「性の多様性」について研修を積む所から始めました。知ることで認識が変化していきます。


◯今まで当たり前のように思ってきたことが、一人の児童の入学を前にして教職員の意識が変わっていきます。


◯まずは、出席番号を男子から始めていた男女別名簿を男女混合名簿にしていきます。


◯名簿が変わると、男子・女子と区別する必要のないものまで、今まで分けていたことに気づいていきます。


◯それまで何の疑問もなく、何でも男子から始めていたことのおかしさに気づいていきます。


◯また、それまで男子は「〜くん」で、女子は「〜ちゃん」「〜さん」と分けて呼んでいたのを、みんな「〜さん」と呼ぶようになります。


◯少しずつ学校の「景色」が変わっていきます。


◯男子と女子の仲も良くなっていきます。「男子だから」「女子のくせに」という固定観念が少しずつ変化していきます。


◯そんな受け入れの土台を作った上でAさんが入学してきます。


◯現在、Aさんは自分らしさを認めてもらう形で学校生活を過ごしています。


◯学年が上がるにつれて出てくる課題は、その都度、保護者とAさんの思いを聴きながら、解決策を考えて対応しているそうです。


◯「身体の性」「見た目の性」「心の性」「好きになる相手の性」は、グラデーションのように一人ひとり違っています。


◯最近の調査で、こうした「性的マイノリティー」は、7.6%いることが分かっています。13人に1人いることになります。どのクラスにも、どの学校にも何人かいることになります。


◯多くの子は、悩みを抱えながら隠しているのです。


◯中にはいじめにあい、不登校になったり、自殺を考えたりする子が多いのです。


◯Aさんのような子どもがありのままの自分でいられる学校を作っていかねばなりません。

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夏休みの宿題②総合学習

🔴夏休みの宿題②総合学習


◯自由研究の代わりに、夏休みに総合学習の宿題を出しておくことで、2学期の調べ学習の時間を中身の濃いものにすることもできます。


◯6年生なら、平和を総合学習のテーマにしていることが多いかと思います。1学期の間に個人のテーマを決めて、夏休み中に調べておくようにすることもできます。


◯5年生なら、国際理解をテーマに、外国の文化や歴史について調べておくこともできます。これも1学期中にどの国を調べるのかも決めておきます。


◯4年生なら、各都道府県の産業や特色について調べたり、バリアフリーなどの障がい者問題について調べたりしておくことができます。


◯3年生なら、街にあるお店や工場、農家に行ってインタビューをしてくるなどを夏休み中に課題にすると、お家の人の協力も得ることができます。


◯学期中では、どうしても個別の調べ学習に時間がかかるために、こうした長期休みの間に課題としておくことも一つの方法です。


◯保護者の方に総合学習の意図や目的、調べ学習の方法などを事前にプリントでお願いをしておくと、子どもが困った時に協力してもらいやすくなります。


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夏休みの自由研究

🔴夏休みの自由研究


◯夏休みに自由研究の宿題を出している先生も多いかと思います。


◯自由研究は、調べる力やまとめる力をつけることがつくからです。


◯しかし、自由研究を何も指導せずに夏休みの宿題にすると、子どもたちは何をどうすればいいのか分からない状態になってしまいます。


◯1学期の間に指導が必要です。


◯いくつか自由研究の例を紹介して、イメージを持たせます。


◯どんなテーマがあるのか、自分はどんなテーマで自由研究をしたいのかを考えて決める所まで授業でしておくのです。


◯子どもが決めたテーマを見て、アドバイスもしておきます。


◯授業で、調べ方やまとめ方の例をプリントにして渡して、説明をして、考えさせておきます。

◯2学期に自由研究の発表会を開催することも事前に伝えておきます。


◯なかなか決まらない子もいます。好きなことや興味のあることを聞いて、個別に相談することが大切です。


◯夏休み中にテーマを変えたい子も出てくるので、もちろんそれもオッケーとしておきます。


◯ここまでしておかないと、子どもや保護者に自由研究の宿題が丸投げの状態になるからです。


◯2学期の発表会では、子どもたちによる投票で、最優秀大賞、優秀賞やユニーク賞を決めます。投票で選ばれなかった中から、特別賞を決めていました。


◯これまでトイレットペーパーやマンホールの蓋をテーマにした自由研究が大賞に選ばれていました。


◯この夏休み、苦労している子どもたちも多いかと思いますが、自分が疑問に思ったことを自由研究で追求することは、きっと自分の力になるはずです。


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平和学習②幻の甲子園 戦時下の球児たち

🔴平和学習②幻の甲子園 戦時下の球児たち


◯夏の甲子園を見て、球児たちの熱いプレーに魅了されている人も多いかと思います。


◯今年は、特に第100回の記念大会で盛り上がっています。


◯1915年に第1回大会が開催されてから、2018年までの104年間に開催出来なかった年があります。


◯1918年の第4回大会は米騒動のために中止になっています。


◯そして1941年の第27回大会は、地方予選の途中で中止となっています。日中戦争が激化し、鉄道は軍事物資の輸送のために使うもので、大量の民間人の移動には使えない事が主な理由だったとのことでした。


◯この2回は、100回の中にカウントされています。


◯1943年、1944年、1945年は戦争のために開催されていません。


◯1942年に「幻の甲子園」と言われている大会が開かれていますが、記録としては入っていません。


◯この大会は、戦意高揚を目的として、軍主導で行われました。


◯当時、野球は敵国のスポーツとして見なされていたために軍部の圧力もあり、多くの野球部が廃部に追い込まれてしまい、参加校は16校でした。


◯スコアボードには「勝って兜の緒を締めよ 戦い抜こう大東亜戦」という軍事スローガンが掲げられていました。


◯ユニフォームのロゴは、漢字のみを使いローマ字は禁止されました。


◯試合開始のサイレンは鳴らされず、進軍ラッパが代用されていました。


◯また、出場校の「選手」は「選士」と呼ばれ、「打者は球をよけてはいけない。球に当たっても死球にならない」という特別ルールが採用されていました。


◯突撃精神に反する行為として、ボールを避けるな、銃弾でもない野球の球が当たったぐらいでなんだという事だったようです。


◯また、原則として選手交代は認められていませんでした。怪我をしても死力を尽くして戦えという事です。肩を痛めても投手は投げ続けなければならませんでした。

◯さらに選手はエラーしたら、軍人から「戦場では失敗は許されん」と殴られたそうです。


◯出場した「選士」たちは、その後戦場に送られて、尊い命を失っています。


◯「幻の甲子園」は、テレビのドキュメントや書籍にもなっています。


◯平和だからこそ、純粋に野球を楽しめることを子どもたちに考えさせる教材となるはずです。




◯このような平和を考える教材は、たくさんあります。子どもたちにヒントだけ出して、自分たちで調べていく方法もあれば、教師が提示して授業で使う方法もあります。




◯今の甲子園大会とどこが違うのかを考えさせます。また、なぜ死球がなかったのかなどの疑問も出てくるはずです。子ども自身に考えさせることが大切です。



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